こんにちはtomoです!
西洋絵画を楽しむには、旧約聖書や新約聖書、ギリシャ神話などの大きな物語を知っておかないといけません。
映画や漫画や舞台などのコンテンツの元ネタは「聖書や神話」というものはめっちゃあります!
これを改めて知っておくということは「人生の質を高める」といっても過言ではないです。
この記事では原罪と楽園追放「アダムとイブ」をモチーフにした名画を紹介していきます。
この記事は、「西洋絵画を最高に楽しむには【旧約聖書】のストーリーを読み解くことが重要」の捕捉的な記事です。
この記事を読んでほしい人
・西洋絵画って何だかわからなくていまいち楽しめない
・ちゃんと古典も理解したいけど何を勉強すればいいかわからない
・ポイントだけ抑えてサクッと西洋絵画を楽しみたい
そもそも西洋絵画は「旧約聖書」などの大きな物語の布教のために描かれたものです。
そこに莫大な労力と才能と資金が注ぎ込まれてきました。
文字の読めない一般の人々にも聖書や神話を伝えるために、プロデュースされた国家プロジェクトだったりするわけですね。
日頃は最新の展覧会情報や絵画の技法についてなども紹介していて、現代アート寄りな情報発信をしています。
で・す・が★
古典はやっぱり素晴らしく、それなくしては現代も成立しないです。
改めてぼくも古典絵画を学びなおしつつ、わかり易くポイントをブログにまとめていきます。
この記事を読むメリット
・西洋絵画を楽しむためのポイント・旧約聖書のストーリーがわかる
・西洋絵画にはモチーフや色に意味があることがわかる
・古典絵画を読み解くと現代美術や映画、アニメ、漫画などをより深く楽しめる
画歴20年の画家で、現在は高校美術教師をしています。
東京芸術大学日本画科を卒業し、ドイツで現代美術を学んできました。
西洋古典絵画は、事前の知識がないといまいち楽しめないんですよね~。
中・高となにげにキリスト教の私立学校に通っていたので、その知識をベースに「なんとなく」で鑑賞してきました。
正直これまで正面から向き合ってはいませんでした・・・。
あらためて古典絵画と向き合ってみたところ・・・めっちゃ面白いじゃん!!!
というのが最近の感想です。
そこで、わかりやすく旧約聖書の物語を追いながら名画を紹介していきます。
一緒に楽しみながら学んでいただけたら幸いです。
この記事は原罪と楽園追放「アダムとイブ」について深堀していく記事です。
ざっくりと全体をながめたい方はこちらのページをご覧ください↓
西洋絵画を最高に楽しむには【旧約聖書】のストーリーを読み解くことが重要
参考にした書籍 「ビジュアル図解聖書と名画(中村明子)」、「ビジュアルワイド 図解 聖書と名画(中村明子)」「マンガでわかる「西洋絵画」のモチーフ(池上英洋)」、「マンガで分かる「西洋絵画」の見かた聖書編(池上英洋)」、「キリスト教と聖書でたどる世界の名画」、「西洋・日本美術史の基本」、「西洋絵画の教科書(田中久美子)」、「名画の読解力(田中久美子)」そしてネット上のいろいろな記事です。
「蛇の誘惑」善悪の木の実、原罪と楽園追放のストーリー
神はアダムとイヴ(エヴァ)をエデンの園に住まわせてきました。
エデンの園にはたくさんの木の実がなっていましたが、善悪の木の実(禁断の木の実)だけは食べてはいけないと神に言われていました。
ある日、イヴは蛇にそそのかされて善悪の木の実を口にし、アダムにもすすめて2人は神との約束を破ってしまいます。
※このときイヴがアダムを巻き込んだため、女性は男性より罪深いともいわれます。
これが、人間は生まれながらにして罪深いというキリスト教思想の根本「原罪」です。
神の怒りを買った2人はエデンの園を追放されます。
大天使ミカエルによって楽園を追放され、智天使ケルビムによってエデンの園は守られるようになります。
善悪の木の実を食べた人間は、知識を得て恥や分別を身につける代わりに多くの苦悩を背負うことになりました。
男への罰は、食べ物を得るために死ぬまで労働に苦しむ。
女への罰は、出産に苦しみ、男に支配される。
男女両方への罰は、寿命が与えられ、永遠に生きられなくなりました。
よく描かれるモチーフ アダム、イヴ(エヴァ)、蛇(トカゲ)、リンゴ、大天使ミカエル、智天使ケルビム
「原罪」の名画
ルーカス・クラナッハ(父)は、同名の息子がいるため、(父)がつきます。
ややこしや。
アルブレヒト・デューラーやハンス・ブルクマイアー(父)のライバルとして競いながら多くの祭壇画を描きました。
クラナッハはこの「アダムとイヴ」のモチーフが大好きで・・・
もう、いったい何枚かいとんねん!?
ってくらい描いています(笑)
そして、めっちゃ裸好き。エロ親父ってイメージがピッタリです。
時代的に、裸を描くことはご法度でしたが、神や聖書の物語上OKなら描けるということで・・・
めっちゃ描いてますねw
というわけで「アダムとイヴ」といえば間違いなくクラナッハが出てくるという。
数枚のクラナッハをまず見ていきましょう。
足元後ろの動物たちが、アダムとイヴの内面的な本質を象徴しています。
イヴの後ろには獰猛なライオンがなかなかの表情で潜んでいますw
アダムの後ろには、「誠実な愛の象徴」である鹿がいます。
上の絵の版画バージョンがこちら↓
版画で有名なデューラーのライバルだけに、クラナッハも版画には手をかけていったって感じでしょうか。
2人とも版画の方は「ぼけ〜」っとした眠そうな顔をしています(笑)
さて、歴史に残る巨匠といえど初期の頃から、技術が完成しているとは限りません↓
う〜ん。
他のクラナッハのアダムとイヴに比べてだいぶ下手ですね。
初期のころはプロポーションなども少し乱れているように見えます。
つい過去を美化して受け取ってしまいがちですが、同じ人間なんだと思わせてくれるのであえて載せておきます。
ラファエロの「アダムとイヴ」です。
アダムがイヴと蛇と口論しているように見えます。
イヴ「大丈夫よ、バレやしないわ」
アダム「いや、神は食べるなって言ってたじゃないか!」
蛇「イヴの言う通り大丈夫よ」
蛇も女性型でイブに似ていますね。
ローマの肖像画化、ピエトロ・ファッケッティの作品。
これは割と中立?
イブの方が蛇のいうことを先に信じちゃって、アダムを誘っているところかな?
アダム、ちょっとボ〜っとしすぎw
フーゴー・ファン・デル・グースの「原罪」。
蛇とトカゲはほとんど同じ意味です。知恵の象徴。邪悪の象徴。
下に載せた、ゴーギャンの版画にもトカゲが出てきます↓
この「アダムとイヴの原罪」が下敷きにないと意味がわからないですね。
ちなみにフーゴー・ファン・デル・グースの「原罪」は2枚で1組の祭壇画です。
片方が「原罪」もう片方が「キリストの哀悼」↓
原罪が生じたシーンと償われたシーンがセットになっているわけですね。
キリスト教のための絵画ということも同時に読みとれます。
こちらはティツィアーノの作品。
「創世記」のアダムとイヴの物語に忠実に描かれています。
知恵の木には1匹の半身半蛇の姿をした蛇がいて、誘惑されたイヴは手を伸ばし、アダムはイヴを止めようとしています。
イヴの足元には、悪徳と欲望の象徴「キツネ」が描かれているんです。
このティツィアーノの作品をベースに、ルーベンスが1枚描いています↓
ほとんど巨匠ティツィアーノの模写ですが、いくつかルーベンスなりの解釈が加えられてアップデートされています。
イヴの足元に描かれた悪徳と欲望の象徴「キツネ」と対比させるために、アダムの左上に善を象徴する「オウム」を描き加えている。
こうしたシンボルを対比させるといった手法は物語をわかり易くしてくれますね!
これはデューラーの版画の影響だといわれています↓
そのデューラーの版画。
デューラーは狡猾さの象徴である猫をイヴの足元の画面中央の最前景に描き、それよりもやや引いた位置のアダムの足元にネズミを描くことで、アダムがイヴに従順であることを象徴的に示しています。
善の象徴オウムもすでにいますね。
デューラー・・・すごいんですけど、自己主張もすごい。
毎度毎度、絵に自分の名前が入った看板が登場します。
余計な解釈を与えないためか、葉っぱもリンゴの葉っぱを使用。
「そぎ落とされた洗練さ」もデューラーの特徴ですね。
ちょっと異界の住人感のある、ウィリアム・ブレイクさんの作品。
アール・ブリュットまではいかないまでも、近い独創性のある作品があって規格外の驚きを与えてくれます。
エデンの園、すでに大荒れしてますね!
このながれでアダムも知恵の実食べるの・・・?!
って感じしますが、そこは雰囲気重視でw
フランソワ・ブーシェの師匠でもあるルモワーヌの作品。
「ロココ」は見ていてフワフワするので好きです。
昔はバロック一択って感じでしたが、時とともに人間の感性、感じ方も趣味も変わっていきますね。
なんていうか・・・イヴが可愛い!
それだけで載せましたw
異時同図法で描かれた【原罪と楽園追放】
システィーナ礼拝堂の天井画にかかれたミケランジェロの楽園追放です。
この蛇も女性型。
旧約聖書全体、男性優位に描かれています。
ミケランジェロはその辺も徹底してますね。
アダムとイヴは、大天使ミカエルによって楽園を追い出されます。
グイグイと剣でつつかれてますw
6場面が異時同図法で描かれています。
①アダムが土のちりからつくられる
②イヴがアダムのあばらからつくられる
③神が2人を祝福(犬がまだ従順な2人を表しています)
④蛇に誘惑されて知恵の実を食べてしまう
⑤裸であることに恥ずかしくて隠れていると、神の顔が現れて見つかる
⑥大天使ミカエルに追い出される
ってな流れですね!
個人的に一番気になるのは、この体育座りしている狼?
なんだこいつはw!?
それでは楽園追放について見ていきましょう↓
【楽園追放】
「楽園追放」といえばこの絵ってくらい出てきますね!
マザッチョの名画です。
イヴの悲しそうな顔。
恥ずかしいし、悲しいし、顔溶けてますね。
出てけ、出てけ〜!
リアリティのある風景とミスマッチな聖書のシーンがちょっとシュール。
責任の押し付け合い系。
「こいつのせいです」って言ってるw
こっちもw
アダム「イヴが食べろって言ったんです」
天使たち「あいつら知恵の実、食べたらしいよ?!」
ざわざわ
神、めっちゃ怒ってる。
そして、イケメン・アダムも必死に謝る。
泣いてるのか寝起きなのかマイペースなイヴ。
知恵の実を食べる = 性行為を覚える
という意味の捉え方もあるそうです。
なんだか、やってはいけないことをしてしまった感が生々しい絵に見えませんか?
ぼくだけ?
大天使ミカエルに追っかけられて?
ちょっと学芸会っぽい感じがします(笑)
わかりましたー!出て行きます!!
こわっ!
追い出された2人は聖書の通り、皮の服を着ています。
エデンの園は、アダムとイヴが追い出されたのち炎の剣を持ったケルビムによって守られます。
ティソさんの絵は独特ですが、史実に基づいたリアリティがあってすごいんです。
まとめ:西洋絵画を読み解く【旧約聖書編】原罪と楽園追放「アダムとイブ」について
今回は、旧約聖書の原罪と楽園追放の物語にまつわる名画を紹介してきました。
これだけの作品を並べてみると、意外とツッコミどころがあるというか面白いですよね!
また、キリスト教側から描いた絵画では磔刑とも繋がっていたり、性的な意味合いを感じさせたり、イヴをファム・ファタル(宿命の女)として描いたり。
非常に奥深いテーマで、いまだにこのテーマをずっと考え続けている人もいるようです。
ぼくは日本人のアーティストとしてあくまで俯瞰して楽しませてもらう程度の距離感なので「いろんな解釈があるんだなぁ」と面白がらせてもらっています。
動物のシンボルの対比構図なんかもいつか自分の作品でも使ってみたくなりました。
絵画制作の基礎、絵作りの参考資料としても非常に良いですね!
これからもテーマごとに深掘りしていきます。
それではまた!
参考にした書籍 「ビジュアル図解聖書と名画(中村明子)」、「ビジュアルワイド 図解 聖書と名画(中村明子)」「マンガでわかる「西洋絵画」のモチーフ(池上英洋)」、「マンガで分かる「西洋絵画」の見かた聖書編(池上英洋)」、「キリスト教と聖書でたどる世界の名画」、「西洋・日本美術史の基本」、「西洋絵画の教科書(田中久美子)」、「名画の読解力(田中久美子)」そしてネット上のいろいろな記事です。
西洋絵画を最高に楽しむには【旧約聖書】のストーリーを読み解くことが重要↓
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