こんにちはtomoです!
美術手帳や日曜美術館、情熱大陸などで取り上げられていて、最近話題の【松山智一】さんについて書いていきます。
主に資料にしているのは、美術手帖6月号です↓
この記事を読んでほしい人
・アーティストを目指している人
・松山智一さんがどんな作家なのか知りたい人
・松山智一さんの作品に投資すべきか迷っている人
逆輸入でブレイクしたアーティストは何人もいますよね。
草間彌生、村上隆、奈良美智、杉本博司・・・などなど。
とはいえ皆さんそれなりに年齢を重ねている方々です。
久々の日本人スター現るという流れで各種メディアに取り上げられていますね!
この記事を読むメリット
・アーティストになるためのヒントがわかる
・松山智一について知れる
・松山智一さんの作品の価値がわかる
画歴20年の画家で、現在は高校美術教師をしています。
東京芸術大学日本画科を卒業し、ドイツで現代美術を学んできました。
今回は【松山智一】さんについての分析と感想などを書いていきます。
参考になれば幸いです!
【松山智一】とは? 経歴など
アーティスト 松山智一(まつやま ともかず)
岐阜県高山市(旧・吉城郡国府町)出身、少年時代をアメリカで過ごす。上智大学経済学部卒業後、2002年に再び渡米。ニューヨーク私立美術大学院プラット・インスティテュートコミュニケーションズ・デザイン科を首席で卒業。
参考:ウィキペディア
これまでに日本、ニューヨーク、ワシントンD.C.、サンフランシスコ、ロサンゼルス等の全米主要都市、ドバイ、香港、台北、ルクセンブルク等、世界各地のギャラリー、美術館、大学施設等にて 個展・展覧会を多数開催。
アメリカ西海岸最大の美術館であるロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)、ドバイの王室コレクション、中東が誇るBank of Sharjahコレクションなどに、多数の作品が所蔵されている。
2012年から2017年5月までの5年間、ニューヨーク私立美術大学スクール・オブ・ビジュアル・アーツ(SVA)のAdjunct Professorを勤めた。2013年4月、ハーバード大学からの招待を受けてアーティストプレゼンテーションを実施。同年9月には同大学にて個展が開催された。
現在はニューヨーク・ブルックリンにスタジオを構えている。2019年9月にはニューヨークのハウストン・バウリー・ウォールに巨大壁画を完成させ、TBSの情熱大陸で特集された。2021年1月には、NHK BS1にて特集が組まれた。
すごいキャリアです!
美術畑出身ではないところも新鮮ですね!
最近の若手でも影響をもろに受けている人も、ちらほら見かけますね。
とはいえ、まだまだ認知している人は少ないのではないかと思います。
それでは少しパーソナルなところをさらっていきましょう!
松山さんの成功パターンは、これから更に冬の時代を迎える日本美術界のスタンダードになるかもしれません。
キャリアのスタートはプロのスノーボーダー
現在45歳にして、世界的に活躍するアーティストとなった松山さん。
もともとはプロのスノーボーダーを目指していました。
様々な企業からギアの提供や遠征の支援を受け、誌面を飾るほどに未来を期待されてもいました。
しかし、大学3年生のころ、本格的な練習を始めようとした矢先に複雑骨折。
そこで選手生命は終わってしまったようです・・・。
そこから「ものづくり」の道へ。
まず目指したのは「佐藤可士和」商業美術の世界へ
経済学部出身の松山さん。
25歳当時、成功者として目立っていたのは佐藤可士和さんや大貫卓也さんなどでした。
まずは表現を学ぶため、1年間リハビリを続けながら、夜間の専門学校に通った。持ち前の性格とスノーボード時代の人脈を駆使して、雑誌にイラストを描いたり、スノーボードブランドのボードやウェアのデザインしたり、カタログも作った。だが、代理店の面接を受けてみても、結局はうまくいかなかった。
引用元:OCEANES
・・・いや、普通にすごくないですか?
全力で目指してきた目標への道が途絶えて、傷も癒えないうちにもう次の目標に向かって取り組んでいる行動力。
これが鍵なのは間違いないですね。
スノーボーダーとしてもトップを目指していたような松山さんなので、上昇志向も強い。
簡単には諦めず質の高い教育を受けて、バリバリやっていこうと考えました。
NY私立美術大学院プラット・インスティテュートへ進学し、デザインを学ぶことにします。
「NYへ留学」するも最初の授業で絶望
留学先のNY私立美術大学院プラット・インスティテュートで受けた最初の授業は「売り上げレポート」について。
「スキルを身につければ、みんな就職できる」・・・といったものでした。
「それが嫌でわざわざNYに来たのに〜!」ってことで絶望します。
そこから、色々と見て回る時期を経て、ブルックリンのアーティストたちと出会います。
彼らは、当時最も治安が悪いと言われていたエリアで、巨大な倉庫を借りて作品を作っていました。
貧乏だけど、飯は食えている。
お高くとまった美術の世界じゃなくて、等身大のアーティストライフを見てカルチャショックを受けました。
そこから美術の勉強を始め、1日2ドルの極貧生活を経験しつつ作品を作っていきました。
図書館で美術のDVDを端から見まくり、ちゃんと学校も首席で卒業しています。
その後、ストリートアートを参考にスタイルを確立していき、少しづつスタジオを大きくし、チームを育てながらキャリアを形成しています。
【松山智一】作品
ティルマンスは、ドイツ出身の写真家。性的マイノリティに言及する作品や、上の写真の展示のように配置を独自の組み合わせで工夫するなどする作家です。
ナイキやリーバイスとコラボ【松山智一】のすごさとは?
あくまで、ぼくなりの主観ですが、3つのすごさがあるなと感じました。
松山智一のすごさ
①覚悟(行動力)
②リスク
③ポジション
まず、1つ目「覚悟(行動力)」
最初の経歴でも書いた通り、プロのスノーボーダーからのアーティストへの転身までの速度。
そして、その後の留学までの流れや、渡米後の努力など、終始行動力にあふれています。
最近のパブリックへの関わりのための巨大彫刻なども職人のスカウトのために世界中を回ってチームを作り上げたそうです。
2つ目は、はじめに「リスク」を取っていること。
これは、ノーペイン・ノーゲインという考え方です。
「はじめに痛み無くして、得るものなし」まさにノーペイン・ノーゲインを実践しています。
何の保証もなく留学し、極貧生活を経てキャリア形成。
おそらく、綱渡りの連続だったのではないでしょうか?
キュレーターが自宅をアトリエにしていると知って「作品を見る価値はない」と言って帰ってしまったこともあったそうです。
3つ目に「ポジション」。
松山智一の場合、日本でのキャリアなどが全くなくNYでの活躍がスタートでした。
しかも、日本に戻ることなく、そのまま活動を続けているという稀有な例です。
草間彌生、村上隆、千住博などのレジェンドとの違いがそこにあります。
昨今では、ようやくメディアの取り上げを経て認知され始めているものの、日本のアート業界にすんなり受け入れられるスタイルでは無いです。
自らを「アウトサイダー」と言い、日本においては「アウトオブアウトサイダー」だとすら言っています。
むしろ、その寄る辺なき状態が、もはや松山智一のアイデンティティになりつつあると言えますよね。
アーティストになるためのヒント【成功の要因】を分析
アーティスト志望の方は、ここは気になる部分ではないでしょうか?
もちろん「作品のクオリティが高い」ことは間違いないです。
密度も高く、技術的にも洗練されています。
またコンセプトにも曖昧なところはほぼ無く、作品をすべて言語化して説明可能な作品に仕上がっていることでしょう。
しかし、この場で書くことは、本や雑誌の美術批評や感想レビューでは、元も子もないので出てこない部分です。
「先行きの暗い日本」と「世界の現状」が松山さんの成功を例にわかります。
要は、「アートに流れるお金の量」がNYなどの海外では桁違いだということです。
この話は、本ブログの趣旨ではないので詳しくは書籍や動画などで調べていただきたいです。
先日、中田敦彦さんのYouTubeにこんな動画がありました↓
いやですね~。でも現実なんです。
もうすでに、日本は貧乏な国になりつつあります。
芸術は余裕がなければできません。
作品を買うために、明日のごはんを我慢する人はいませんよね?
実際日本は、そこまで貧困でありませんが・・・。
しかし、アートに流れているお金は香港やアメリカ、ヨーロッパに比べて圧倒的に少ないことがわかると思います。
学芸員の数でも圧倒的です。
NYのMoMAでは800名の職員が働いていますが、日本では一番大きくて東京国立近代美術館で30数名です。
・・・こんな状況でアートを続けていれば、なんかもう「元気なくなっていくのもしょうがないな…」って感じしませんか?
それでも、誰もお金のことって表では言わないんですよね。
根性論や伝統などの精神論では、竹やりと戦闘機をイメージせずにはいられません。
ガラパゴス化が必ずしも悪いこととは思わないんですが、これから海外マネーも入ってくるので、需要は圧倒的に海外にシフトしていきます。
ちゃんとブランディングしてパケージしていかないと、どんだけ頑張っても安ーく買いたたかれて持っていかれてしまいます。
そもそも見ても貰えないかもですね。
精神的な伝統やアカデミックな色の強い、日本の美術界は、松山智一さんのような存在を本当は認めたくないはずです。
しかし、その「抵抗力すら無くなっている」のが現状だと思います。
松山さんの海外での圧倒的活躍、需要、サクセスストーリーは無視できないのです。
日本にはコレがあるとか、言えるものは沢山あります!
縄文、茶、禅、若冲、浮世絵、岡本太郎・・・すべて過去のものばかり!
日本の文脈を生かして活躍してくれる松山さんに乗っかることで、これからの日本美術は生きながらえるしかないのが、現実なのではないかと思っています。
【松山智一】を例に見る、「ひるね姫」的ストーリー展開
あなたは「ひるね姫」はご覧になりましたか?
この作品、内容ももちろん面白いのですが、ストーリー展開がすごいんです。
非常にリアリティにあふれている。
普通の漫画やアニメの作り方というものは、基本的に大きなストーリーがあって結末は決まっていてそこに流れていくように作っていきます。
もちろん、リアリティを感じさせる工夫をしながら作るので違和感はありません。
しかし、この「ひるね姫」は根本的に違うのです。
主人公のココネは、特別な能力もないし、キレる頭を持っているわけでもない。
普通よりちょっとクセのある元気な女の子といった感じです。
ココネは、次々に起こるアクシデントに場当たり的に対応していきます。
それが、すごくリアル!
確かに、どんだけ主人公的な素養を持っていようと「リアルに対応しようとしたらこうなるかも」と思わせてくれます。
その場その場で、最適だと思う選択肢を選んで、全力でタスクをこなしていく。
その先に、偶然やラッキーな展開を積み重ねて物語は進んでいきます。
実際の人生って、そういうものですよね?
今の瞬間に取り組んだ結果の積み重ねが、未来を作り、過去になっていく。
当たり前なんですが、つい未来をコントロールしようとしてしまう人間の性をこのストーリー展開から反省させられます。
この「ひるね姫」的ストーリー展開は、まさに松山さんのサクセスストーリーと重なるなと感じさせてくれました。
大学生時代からプロスノーボーダーを目指す → 海外遠征、企業スポンサーも付く →
複雑骨折、選手引退 → リハビリしながらデザイナーを目指す → 就職失敗 → NYへ留学 →
授業に絶望 → アーティストを目指す → 1日2ドルの極貧生活 → ストリートアートに挑戦 →
ナイキから声がかかる → 個展などを積み重ねる → スタジオもチームもプロジェクトも大きくなる →
パブリックアートを手がける → 日本のメディアにも取り上げられる…
成功したからこそ、すごいな、流石だなと思いますが、かなり場当たり的です。
もちろん長期的な目標や努力もあったと思いますが、今その場でできる努力を最大限おこなう。
その積み重ねの先に、今の成功があるという展開には、学べるものがあります。
まとめ:【松山智一】に学ぶアーティストになる方法
松山智一さんの記事を書いてきました。
作品のクオリティもすごいですが、その行動力は物凄いなと思います。
さらに、覚悟を持ってリスクをとっていること、NYなどの成長する海外市場にポジションを取り続けていること。
また、今その瞬間を全力で乗り切っていくことの大切さは参考になりますね。
松山さんの活躍は、日本の市場のガラパゴス感と海外市場のあり方の差異を改めて明確に突きつけられる事例でした。
最後になりますが、松山さんの作品が投資になるかどうかですが、今後松山さんのようにチームを作り込んで作品を作れる体制を持った日本人作家はまだまだ少ないはずです。
なので、今後も認知とともに人気は増していきそうです。
ただ、投資としてのアート購入は、微妙です。
本当の価値は、時のふるいにかけてみないと分からないというのがアートの面白いところです。
余談ですが、投資をするなら金、株、不動産などの伝統的な資産に投資しましょう。
アート作品購入は投資というより投機です。
趣味として消費を楽しむ、作家を応援するという意味合いで買う方が健全です!
それではまた!
この記事で主に資料にしているのは、美術手帖6月号です↓
松山智一さんの画集が出ました↓
Amazon:https://amzn.to/3fis4v0
Rakuten:https://a.r10.to/hy7t3t