こんにちはtomoです!
今回はたくさんの抽象画家の名画・名作を集めて「一気に比較しよう!」という実験企画をやっていきます。
今まで絵画研究ノートを作ったり、人物図鑑を紙のノートにまとめたりしてきました!
なぜ、なぜこれまでブログでやってこなかったのか・・・( ; ; )
「今日が一番若い日!」ということでこれからガシガシやっていきたいと思います。
同じ系統・ジャンル・年代・テーマなど近いもので比較をしていくと違いが浮き上がってくるので、参考にすることができます。
というわけで今回は、名作の抽象画を並べて研究をしていきます!
この記事を読んでほしい人
・抽象画についてもっと知りたい!
・抽象画ってどう描けばいいのかわからない〜
・抽象画の歴史や抽象画家について全然知らなくて自信ない・・・
抽象画がよくわからない・ちゃんと知りたいという方は、下記の記事をまずご覧ください↓
≫アクリル画講座【抽象画】の描き方と考え方「制作例」まで丁寧に解説
この記事でも考え方については触れますが、さらっといきます。
この記事を読むメリット
・抽象画について深く知れる
・抽象画の描き方やテーマについてアイデアを得れる
・抽象画の歴史や抽象画家について詳しくなれる
画歴20年の画家で、現在は高校美術教師をしています。
東京藝術大学日本画科を卒業し、ドイツで現代美術を学んできました。
抽象画は学生時代から好きで研究・制作してきました。
今回はそんな抽象画をテーマに記事を書いて行きます!
あくまで、アーティストの絵画制作の立場からの研究なので感覚重視です!
歴史的な整合性とか言われると「すみません!」なところも多々あるかと思います。
趣旨としては、「抽象画と画家をたくさん知って比較検討すれば、いま何を描くべきか見えてくる」という仮説のもと記事を作成しています。
誕生日の早い順に並べてみました。
15人の巨匠の名画を、1人につき3〜5枚ほど選び並べて行きます。
感想、解説をはさみながら書いていき、最後のまとめで考察を行なっていきます。
それでは書いていきます↓
- 抽象画とは?
- ワシリー・カンデンスキー(1866〜1944年)
- ピエト・モンドリアン(1872〜1944年)
- カジミール・セヴェリーノヴィチ・マレーヴィチ(1879〜1935年)
- パウル・クレー(1879〜1940年)
- ジョセフ・アルバース(1888〜1976年)
- ジョアン・ミロ(1893〜1983年)
- ルーチョ・フォンタナ(1899〜1976年)
- マーク・ロスコ(1903〜1970年)
- バーネット・ニューマン(1905〜1970年)
- 吉原治良(1905〜1972年)
- ジャクソン・ポロック(1912〜1956年)
- 白髪一雄(1924〜2008年)
- サイ・トゥオンブリー(1928〜2011年)
- ゲルハルト・リヒター(1932年〜)
- 李 禹煥 / リ・ウーファン(1936年〜)
- まとめ:抽象画家15名・名画50選を徹底比較【絵画研究ノート】やさしく解説
抽象画とは?
抽象画家として有名なのは、カンデンスキーやミロ、ロスコ、ポロックなど沢山の巨匠がいます。
具象と抽象は反対のもの、としてとらえている方は多いと思います。
しかしこれは間違いです。
✖ 具象 ⇔ 抽象
このように言葉としては対義語のように思われがちなのですが、実際の世界では具象の中に抽象は存在します。
〇 具象 > 抽象
こんな感じです。
よりミクロな視点で世の中を見ていくといった見方ができます。
作品によっては俯瞰した、宇宙的視点で描かれているものもあるので・・・
抽象 > 具象 > 抽象
とも言えますね。
ワシリー・カンデンスキー(1866〜1944年)
ロシア出身の画家で、ドイツとフランスで活躍、のちに両方の国籍も取得しました。
カンデンスキーは抽象絵画の創始者とされます。
1922年にバウハウスで教官を務め、1933年にナチス・ドイツに閉鎖されるまで勤務。
1911年、フランツ・マルクとともに「青騎士」を結成。
この頃に、代表作「コンポジション」シリーズが誕生。
ここから抽象画の歴史は始まっているわけですね!
ピエト・モンドリアン(1872〜1944年)
オランダの画家。
抽象画最初期の画家の1人。
カンデンスキーの「熱い抽象」に対して「冷たい抽象」と呼ばれます。
林檎の木を抽象化していくプロセスは、抽象画の成り立ちの上で非常に注目されるポイントです!
参考:http://artprogramkt.blog91.fc2.com/blog-entry-63.html
カジミール・セヴェリーノヴィチ・マレーヴィチ(1879〜1935年)
ロシア・ソ連の芸術家。
戦前に抽象絵画を手がけた最初の人物。
1910年頃には、ピカソなどのキュビズムや未来派の強い影響を受けて派生した、「立体=未来派(クボ・フトゥリズム)」と呼ばれる作品を制作していました。
ロシア構成主義にも大きな影響を与えました。
ここからは、もはやバリエーションの時代になっていきます。
すでに存在する抽象画という様式を使って表現を模索する時代になります。
パウル・クレー(1879〜1940年)
スイスの画家。スイスの首都ベルン郊外のドイツ・ミュンヘンのブーフゼーで生まれました。
当時、ミュンヘンはパリと並ぶ芸術の都で、そこでカンデンスキーの恩師フランツ・フォン・シュトゥックの指導を受けます。
画一的な学校の教育は、クレーには合わず一年で退学してますw
カンデンスキーの創った「青騎士」に参加し、バウハウスでも教鞭を取りました。
内容は、宗教画や内省的な主題が多いです。
谷川俊太郎さんがクレーの絵から受けたインスピレーションをもとに詩を描いた【詩画集】「クレーの天使」なども出てます。
それだけ密度があって神秘性の高い絵画だといえます^^
Amazon:https://amzn.to/3cSP8QI
≫クレーについて、詩画集「クレーの天使」について詳しく知りたい方はこちら
ジョセフ・アルバース(1888〜1976年)
ドイツ出身で、1933年のバウハウスの閉鎖に伴い、アメリカに移住。
アメリカにおいては、ブラック・マウンテン・カレッジ(多くのアメリカの現代美術家がこの大学を卒業したことで知られる)やイエール大学などで美術教育を継続。バウハウス的な教育理念をアメリカにもたらしました。
アメリカでの教え子の中には、ロバート・ラウシェンバーグやサイ・トゥオンブリーなどがいます!
美術書の著述、ガラス作品や建築、プロダクト、などなどの偉業を行うマルチクリエーターであり、教え子にもラウシェンバーグやサイ・トゥオンブリーなどを育てた教育者としても一流なアルバース!
偉業の割には、日本ではいまいち認知度も低いような気がします。
ジョアン・ミロ(1893〜1983年)
スペイン、カタルーニャ出身の画家。
シュルレアリストとも言われますが、ミロは抽象画家としてカンデンスキーやクレーの繋がりの先にいる作家だと思います。
ミロは1930年代から試していた版画技法を用い、50点それぞれが独立した作品でもあり、全てで一つの作品ともなるようなこの連作を作り上げた。音楽を主題にした絵が多いことから、この連作は『バルセロナ組曲』とも呼ばれる。
ウィキペディア
「星座」と呼ばれるシリーズの23作の小さな一枚。
関わりがあったかはわかりませんが、作品にはかなり親和性があります。
ドイツ、オランダ系の抽象画とは熱気が違う気がしますね〜!
ルーチョ・フォンタナ(1899〜1976年)
イタリアの芸術家。彫刻の作品もあります。
空間主義(spazialismo)運動の創始者です。
彼はこの思想において、色や音、空間や動き、時間などを新しいタイプの芸術に壮大に統合することを意図していました。
上の絵は、フォンタナの中で最も有名なシリーズです!
ブランクーシの彫刻を見て感じるような空間への干渉を感じますね。
歳の差はありまずが、イヴ・クラインと親交があったようです。
マーク・ロスコ(1903〜1970年)
ロシア系ユダヤ人のアメリカの画家。
批評家クレメント・グリーンバーグによって見出されました。
”ロスコ・ルーム”自分の作品に囲まれた空間を理想の展示空間として望みました。
原始の美術や独自の神話の解釈を込めたロスコの絵画は独特のスタイルを生み出しています。
ニーチェの影響なども強く、フロイトやユングなども研究しました。
病気と私生活のトラブルなどの理由で自殺。66歳でした。
バーネット・ニューマン(1905〜1970年)
ロシア系ユダヤ移民の子としてニューヨークに生まれます。
ニューヨーク市立大学で哲学を学び、実家の服飾業を手伝います。
1930年の25歳から絵を描き始め、Zip(ジップ)と呼ぶ細い縦線が特徴の抽象画家です。
ユダヤ教つまり旧約聖書のモチーフが多いです。
「アダム」、「イヴ」、「アブラハム」、「ウリエル」、「ヨシュア」などですね!
しかし「十字架」「アンナの光」はキリスト教的モチーフなので、ニューマン自身はユダヤ教徒というよりはキリスト教よりの宗教観だったようですね。
この辺、詳しく知りたい方はぜひこちらの記事をご覧ください↓
≫西洋絵画を最高に楽しむには【旧約聖書】のストーリーを読み解くことが重要
他にも「夜の女王」やアメリカ的なネーミングの絵画もちらほらあるので、割と現代的な感覚の持ち主だったのではないかな〜と思います。有名な彫刻作品で「ブロークン・オベリスク」など普通にめっちゃ格好いいです!
吉原治良(1905〜1972年)
近年、MoMAでも取り上げられた具体美術協会の創設者です。
主な会員に白髪一雄、嶋本昭三、元永定正、田中敦子らがいました。
絶対的リーダーとして、“これまでになかったものを創れ” “抽象的な表現であること”の2点を徹底して要求。
ついに、日本人画家の初登場ですね!
1957年のフランス人美術評論家ミシェル・タピエとの出会いが転換点となり、“GUTAI”は欧州で熱く注目されるようになりました。
ジャクソン・ポロック(1912〜1956年)
ワイオミング州出身のアメリカの画家。
批評家クレメント・グリーンバーグが「いくら称えようとしても称えるための言葉が存在しない」と最大級の賛辞をおくり、「アクション・ペインティング」の代表的な画家になりました。
またもやグリーンバーグ。
ジョアン・ミロやパブロ・ピカソの影響がモロに出ている頃です。
それぞれの作品に宗教性やモチーフへの意図などがはっきりとあり、研究の様子が作品を追っていくとわかります。
アフリカ美術だけでなく、仏教や禅への興味もあり、作品にも影響しています。
作品名は、イングランドの劇作家ウィリアム・シェークスピアのロマンス劇「テンペスト」第1幕第2場のセリフ、「Full fathom five thy father lies/Ofhis bones are coral made/Those are pearls that were his eyes(水底深く父は眠る/その骨は今は白珊瑚/かつての二つの目は真珠)」を引用したと考えられる。
出典:MUSEY
1956年8月11日酒に酔い猛スピードで車を運転し、自動車事故を起こし44歳で死亡しました。
白髪一雄(1924〜2008年)
兵庫県尼崎市出身。
吉原治良の創設した、具体美術協会に参加。
床に広げたカンバスの上に絵の具を置き、天井からぶら下がったロープにつかまりながら裸足で描く手法を考案。
70歳を超えてもなおこの手法を貫きました。
とはいえ、ポロックなどと比べると単純な評価ではあまり高くはありません。
作品の質は非常に高いのに、日本人がアクションペインティングをやっても「パクリだね」といった印象になるということですかね・・・。
サイ・トゥオンブリー(1928〜2011年)
アメリカ合衆国バージニア州出身の画家、彫刻家。
現代美術家のロバート・ラウシェンバーグと親交が深いです。
ラウシェンバーグの勧めで、ブラック・マウンテン・カレッジに進み、一緒に南ヨーロッパや北アフリカを旅行しています。
1953年には、暗号製作者として、アメリカ陸軍に従軍。
この経験は作品にも影響を与えたとされます。
作品は無彩色や彩度の低い背景に、「e」や「I」の記号を描き続けるものや、ローマ・ギリシャ神話の神々の名前が入ったドローイングなどを描いています。
サイ・トウォンブリーの展示室は独特の静けさに包まれます^^
それでいて、うっすらと心地よい音楽が聞こえてくるような錯覚に陥ります。
参考サイト:Cy Twombly Foundation
ゲルハルト・リヒター(1932年〜)
ドレスデン出身のドイツの画家。現代のアート業界の世界的スターの1人。
「ドイツ最高峰の画家」と呼ばれています。
ちょっとエコ贔屓で多めに絵画を貼ってしまいましたw
現代の抽象画家といえば?
まず、リヒターの名前が上がりますね。
作風もアメリカ的な文脈至上主義(ぼくが勝手につけた)なものではなく、あくまで感覚的に、クラシカルに芸術に向き合い変化と進化を続けてきたことが世界的に評価されています。
あからさまな引用や結論ありきな手法などは少ないです。
しかし、「具象絵画から写真へ」、「写真的表現から抽象絵画へ」といった文脈を説明したり、デュシャンのガラス作品を引用したりしています。あまり部分的なものでないところがリヒターの特徴でもありますね。
2012年、競売大手サザビーズがロンドンで行った競売で、エリック・クラプトンが所有していたリヒターの抽象画『アプストラクテス・ビルト(809-4)』が約2132万ポンド(約26億9000万円)で落札された。生存する画家の作品としては当時史上最高額。
ウィキペディア
李 禹煥 / リ・ウーファン(1936年〜)
大韓民国慶尚南道に生まれ、日本を拠点に世界的に活動している美術家。
多摩美術大学名誉教授。
1960年代後半に多摩美術大学の齋藤義重教室を中心として起こった「もの派」の中心人物のひとりであり、とりわけ理論面で果たした李さんの役割は大きいです。
李さんの作品は、シンプルなドローイング、石、岩、ガラス、金属といった素材を生かした作品作りが基礎になっています。
日本人が抽象的表現を主体とするなら、この辺りは絶対に抑えておかないといけないポイントですね!
まとめ:抽象画家15名・名画50選を徹底比較【絵画研究ノート】やさしく解説
先日、旧約聖書の名画をまとめていて「同じテーマで名画を並べて比較したら面白い」ことに気づきました。
そして今回、抽象画をまとめてみました!
個人的にはめっちゃ楽しかったですw
細かいところは、ウィキペディアなどを検索してみてください。
ここまで並べてきて見えてきたポイントを整理しておきます。
・「抽象絵画」自体は初期の時点(マレーヴィチ)で完成している。
・「アクションペインティング」はまた別物。
・GUTAI(具体美術協会)は海外での評価を得ている。
などです!
抽象絵画は概念的なので、立体との相性も良く、彫刻や建築などを手がけている作家も多いです。
一方、ロスコやポロックなどのように内省が強いと密度の濃い抽象画が生まれますが・・・精神を病んでしまうようです。財産や社会的状況にも深い影響は深いはずですが。
気をつけましょう!(マジで)
あえて、いま抽象絵画に取り組んでいる人はよほどの信念をもってその表現を極めようとしている人か、あんまり勉強せず盲目的に制作しているか、の二極化だと思います。
現在のトレンドは、ピータードイグや松山智一に見られるように、半抽象的表現や一部引用といった形をよく目にします。
2020年に行われた国立近代美術館の展覧会レビューです↓
この白いぽつぽつは、エナメル塗料でジャクソン・ポロックの引用です。
NYを拠点に活躍する日本人アーティスト松山智一について書きました↓
≫【松山智一】に学ぶアーティストになる方法|覚悟とリスクとポジション
抽象表現はぼくも好きな表現ですが、この表現方法自体はかなり研究はされてきているので、あくまで表現の一形態として捉えておくことが重要ですね。
いつも言っているのですが・・・
「どう描くかではなく、なにを描くか」
これは大切なことなので、いつも自分にも言い聞かせています。
それではまた!
近々には、抽象彫刻も取り上げていきます!
アクリル画講座【抽象画】の描き方と考え方「制作例」まで丁寧に解説↓
アクリル画講座【抽象画】の描き方と考え方「制作例」まで丁寧に解説
こんにちはtomoです!今回は「抽象画」の描き方や考え方について書いていきます。意外と考え方についてはわかり易く教えている人はいないのではないでしょうか?「抽象画」を描いてる人にも、実はよくわからず絵...