【展覧会レビュー】東京都美術館「イサム・ノグチ 発見の道」すべては石で出来ている

「【展覧会レビュー】東京都美術館「イサム・ノグチ 発見の道」すべては石で出来ている」のアイキャッチ画像

こんにちはtomoです。

先日、東京都美術館「イサム・ノグチ 発見の道」展に行ってきました!

素晴らしい展示だったので、レビュー記事を書いていきます。

イサム・ノグチのアトリエは「香川県高松市牟礼町」「NY」にあります。

その2ヵ所では常にまとまった作品が見れるのですが、なにぶん作品が重くてでかいので(笑)

これまで他の場所で大きく公開されることはありませんでした。

貴重な機会なので、非常に期待していました!

そして期待以上に感動させてもらえたので、ぜひオススメしたい展覧会です。

この記事を読んでほしい人

・なにか面白い美術展はないかな~

・「イサム・ノグチ」ってどんな人?

・なぜいま「イサム・ノグチ」なのか?

フーフー
石ばっかゴロゴロしてて全然面白そうじゃないんですけど
tomotomo
そんなことないよ(汗)
「あかり」シリーズや金属を使った作品もあるし、何よりイサム・ノグチの人生や考え方が面白いんだよ~!
tomotomo
それにイサム・ノグチは自ら遊園地を作ろうとしたほど、子供に伝えたいことのあった作家だよ。
子供と行くのもおすすめな展覧会だよ

この記事を読むメリット

・「イサム・ノグチ」展の面白さがわかる

・「イサム・ノグチ」がどんな人かわかる

・抽象彫刻が日本で根付いている理由がわかる

tomotomo
改めましてこんにちはtomoです!
画歴20年の画家で、現在は高校美術教師をしています。
東京芸術大学日本画科を卒業し、ドイツで現代アートを学んできました。
今回は「イサム・ノグチ」展の面白さを伝えていきます。

「イサム・ノグチ」とは?

©朝日新聞社

イサム・ノグチIsamu Noguchi、日本名:野口 勇、1904年11月17日 – 1988年12月30日)は、アメリカ合衆国ロサンゼルス生まれの彫刻家、画家、インテリアデザイナー、造園家・作庭家、舞台芸術家。日系アメリカ人。

父親が日本人(愛知県生まれの日本の詩人で慶應義塾大学教授の野口米次郎)で母親がアメリカ人(アメリカの作家で教師のレオニー・ギルモア)。

ウィキペディア

日本人の父と米国人の母の間に生まれ、アイデンティティの葛藤に苦しみ歴史に翻弄された人生を送りながら、独自の彫刻哲学を打ち立てました。

彼の人生には、丹下健三や岡本太郎、フランクロイドライトやバックミンスター・フラーなど数々の有名人の名前が登場します。

才能のある人のところには、才能ある人たちが集まるんですね!

というかかなりの人たらしですねw

女性関係もなかなかすごいです(笑)

あのフリーダ・カーロとも恋人関係にあったそうです。

「イサム・ノグチ」の世界観

グッズ・図録・音声ガイド・サウンドツアー | イサム・ノグチ 発見の道

イサム・ノグチは、インタビューにこう答えていました。

「地球は石で出来ている。砂だって小さな石でしょう?人間も石から出来た。」

すべては石から出来ている。だからぼくは石に興味を持つんだ」

人間の祖先のアダムも土のちりから作られていますからね。

旧約聖書の解説アダムとイヴの創造について

よく考えたら確かに「すべては石から出来ている」と言えます!

「イサム・ノグチ」展の見どころは?

東京都美術館の子供用ガイドがステキ!

このガイドブック見てもらえれば、予習はバッチリですね!

というか、展覧会は作品に焦点が合っています。

イサム・ノグチの全容に関しては、こちらのPDFのほうが詳しくまとまっていますよ。

東京都美術館イサム・ノグチ展子供用_パンフレットPDF

展覧会は3部構成になっています。

「イサム・ノグチ 発見の道」展の構成

・第1章 彫刻の宇宙

・第2章 かろみの世界

・第3章 石の庭

第1章 彫刻の宇宙

第1章では、「あかり」シリーズの丸いライトが浮かび上がり、まさに彫刻の宇宙です!

石庭を想わせる白い庭石も敷かれていて、禅の世界観も垣間見えます。

これは、キュレーションの力が大きいので演出的ではありますw

クロノス 1947年

また、初期の頃の作品もありました!

シュルレアリスム的な、人間や動物をデフォルメした作品でした。

イサム・ノグチのバランス感覚、初期の思考の軌跡を読み取ることができます。

個人的には、胸熱な作品。「人間イサム・ノグチが作った」という感じがあります。

第2章 かろみの世界

黒いシルエット 1958-59年

「第2章 かろみの世界」からはかなり洗練された作品が並んでいきます。

金属板を折り紙のようにして作った作品。

「あかり / AKARI」シリーズの展示などがありました。

「あかり」には色んな意味が込められているらしく「明るい」だけではなく「軽い」という重さに関しての意味もあるそうです。

また、光を発する彫刻なので影もない

そして、値段も安い(石の作品に比べて)ので誰でも買うことができる。

インタビューでは、プロダクト作品が安くて誰にでも使ってもらえる作品であることを「こっちのほうが嬉しい」と言って軽やかに笑っていました。

第3章 石の庭

第3章《石の庭》 ©2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, NY/JASPAR, Tokyo E3713

第3章は展覧会の目玉!

香川県高松市牟礼町の庭園美術館の作品を大量に持ってきて展示してありました。

庭の情景を思わせるつくりになっていて、癒しの空間がひろがっていました。

見どころ | イサム・ノグチ 発見の道
フロアーロック(床石)1984年

ぼくが一番気に入ったのはコレです!

見た瞬間「石のステーキだ!」と思いました。

地球を素材に最高の部位を切り分けてきたような作品によだれが止まらなくなりました。

・・・嘘ですw

が、まあそれくらい興奮しました(笑)

石の種類や技法については全く分かりませんが、石と対話しながら制作する晩年のスタイルは理想の芸術家像そのものですね。

いつかその境地に行ってみたいものです。

「イサム・ノグチ庭園美術館」について

イサム・ノグチ庭園美術館は、この地が未来の芸術家や研究者、そして広く芸術愛好家のためのインスピレーションの源泉になることを強く望んでいたノグチの遺志を実現したものです。

150点あまりの彫刻作品はもとより、自ら選んで移築した展示蔵や住居イサム家、晩年制作した彫刻庭園など、全体がひとつの大きな「地球彫刻」、あるいは環境彫刻となっています。

出来うる限り、生前の雰囲気そのままで環境そのものを公開し、専門的な調査・研究のためのアーカイブ(資料研究空間)となっております。

ジャンルを超えた宇宙的でコスモポリタンな、開かれたノグチの世界像を心ゆくまで味わっていただきたいと思います。

イサム・ノグチ庭園美術館HP(日本)

この題字に感じるものはありませんかw

時代と骨太の芸術魂を感じますね!

いまだに往復ハガキで美術館の予約を行えるそうです・・・!

香川県高松市牟礼町⇒ イサム・ノグチ庭園美術館 

一方、NYの同美術館は↓

めっちゃオシャレな最新のHPです!

このギャップすごいです。

サイトもECショップになっていて「あかり」や「コーヒーテーブル」も多彩なバリエーションで購入できます。

日本に届くかはわからないですが。

それにしても、ちょっと日本の庭園美術館の今後が心配になります・・・。

NY ⇒ イサム・ノグチ庭園美術館

先程のサイトだと届くかわからないのですが、こちらのサイトなら間違いなく「あかり」シリーズも「コーヒーテーブル」もネット注文できますよ。

MoMA Design Store

全国にテナントショップがあったり、美術館の中のミュージアムショップで商品の取り扱いがあるMoMA(ニューヨーク近代美術館)の商品サイトです。

安いものなら数百円から、しっかりしたフレーム入りのポスターまで幅広く対応。

見てるだけでも気分が上がりますw

MoMA Design Storeはこちらから↓

MoMA STORE

“AKARI(アカリ)”と名づけられたこの照明の彫刻は、イサム・ノグチと岐阜県の伝統産業である岐阜提灯との出会いの中から1952年に創り出されました。AKARIからもれる淡く優しい光は疲れた心身を癒してくれます。イサム・ノグチの作品はMoMAコレクションにも収蔵されています。通常1万5千円以上送料無料。

AKARI(アカリ) スタンドライト 1A : ¥16,500(税込) ↓

アカリ スタンドライト 1A

東京都現代美術館「イサム・ノグチ 発見の道」展概要

会場東京都美術館
会期2021年4月24日(土)〜8月29日(日)開催中[あと53日]
開館時間9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
休館日※緊急事態宣言により4月25日(日)より臨時休室 月曜日(ただし、5月3日、7月26日、8月2日、8月9日は開室)
会場〒110-0007  東京都台東区上野公園8−36


≫【イサム・ノグチ 発見の道】東京都美術館

チケット購入はこちら

ちなみに、会場を出てから知ったのですが・・・

サクナクションのボーカリスト山口一郎さんが、演出した音楽を聴きながら展覧会を廻るというサービス(有料)があります。

サカナクション・山口一郎が、音楽でイサム・ノグチを紐解く

「ちょ、もうちょっと大きく宣伝してくれ〜!」

と思いましたが、しょうがないですね。

とはいえ、1周目は自分の感覚で楽しんで2周目にそういったサービスを利用するべきとも思います。

山口さんもイサム・ノグチがかなりお好きなようです。

全6回のシリーズで、ノグチ作品が山口さんの創作活動に与えた影響や、展覧会への期待を語ってくれています。

かなり腹落ちする内容です。

日本の「抽象彫刻」および「抽象画」について

ヴォイド 1971年

日本では「抽象彫刻」や「抽象画」って結構すんなり受け入れられているように思います。

今だと割と皆さん普通に飾ったりしていますよね。

「ゲルハルト・リヒターの抽象画が36億円」とかになってくると驚きだと思うのですが、文化的にはもう馴染んでいますよね。

2014年、オークションハウス・クリスティーズで、36億円という高額を記録したゲルハルト・リヒター

背景には宗教的な壁が無いことだと思っています。

抽象画は感覚的に訴えてくれるので、聖書の知識などがなくても十分楽しむことができます。

印象派が人気な理由も同じだと思います。

抽象画の歴史はまとめてみると意外とあっさり理解できました!

基本は伝統的絵画からの脱却がテーマで、その辺はすぐに達成されますw

あとは、それぞれの画家が創意工夫を重ねていきます。

今ではもはや、表現の一形態ですね。

それほど難しい話ではないので、良かったら下記の記事を見てみてください。

抽象画家15名・名画50選を徹底比較【絵画研究ノート】抽象画の歴史を一挙解説

抽象彫刻もまとめたいですね!

実はもう下書きはできているのですが、とりかかれていません。。。

夏休み中のぼくの宿題ですねw

まとめ:東京都美術館「イサム・ノグチ 発見の道」展

下方へ引く力 1970年 横浜美術館

今回の記事では・・・

イサム・ノグチの人物像、人生、世界観について

イサム・ノグチ庭園美術館について

東京都美術館「イサム・ノグチ 発見の道」展概要について

抽象彫刻について

などを書いてきました。

イサム・ノグチの魅力などが少しでも伝わっていたら嬉しいです!

コロナ禍でまた外出制限などがありますが、良質な情報に触れることなどはネットでもできますし、イサム・ノグチの作品は買うことだってできます。

イサム・ノグチの作品展は確かに今しか見れませんが、作品そのものは石でできているので、我々よりは確実に長生きしますw

焦らなくてもいつかは見れます^^

香川のイサム・ノグチ庭園美術館にもぜひ行ってみたいですね。

NYの庭園美術館にもそのうち行きたいと思います!

それではまた!

僕の最近のアート散策をまとめた記事です↓