こんにちは、tomoです。
私は現代アートの作家をしています。芸大を卒業してドイツ留学を経て、現在は現代アーティスト、講師、デザイナーなどをしています。
詳しいプロフィールを知りたい方はこちら
今回は現在、森美術館で開催中のSTARS展に行ってきたので感想と日本を代表する現代アーティストを紹介したいと思います。
「STARS」展
2020.7.31-2021.1.3森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
このブログでは、アートリテラシーについて発信しています。
アートリテラシーとは?という方はこちら↓
この記事をオススメする方
・現代アートを勉強したい
・美大、美術業界に興味がある
・知識の幅を広げたい
今回の記事では、あまり現代アートに慣れない人が、会場の解説文を読んでも分かりづらいと思いましたので、初心者にも分かりやすくかつ、私なりの解説を加えてそれぞれの作家についても書いていきます。
少し長いので、気になった作家のところだけを読んでいただければと思います。
STARS展について
この展覧会は、一言でいうと”2020の現代アートはどんな状況か確認しよう”というようなコンセプトであると解釈しました。
そのために代表的な6人のアーティスト、村上隆、李 禹煥、草間彌生、宮島達夫、奈良美智、杉本博司を選び紹介、またこれまで日本の現代アートはどんな形で海外に紹介されてきたかをまとめていました。この辺は興味深かったです。
ジャンプ漫画でいえば、孫悟空、桜木花道、浦飯幽助、キン肉マン、両津勘吉、大空翼といったところでしょうか。
それでは、各作家を紹介していきますね!
村上 隆(むらかみ たかし、1962年(昭和37年)2月1日 – )
日本のサブカルチャーの中に江戸時代から続く日本独自の感性を見出し「スーパーフラット」という概念を欧米で発表し、世界的評価を得たアーティストです。また、近年鬼や羅漢などをモチーフに取り扱った作品も制作されています。
アンディ・ウォーホルのように工房を持っていて、高クオリティの作品を沢山作るための工夫も行っています。徒弟制度の実践も行っています。ここにも江戸の系譜というのを感じますね。
最近は古典をモチーフにしているためか、あまり聞かなくなりましたが、パクリなどの批判の対象になって、日本ではあまり評判は良くなかった印象があります。
現代アートというゲームのプレイヤーとしての表現行為は、日本ではなかなか受け入れられない場面が未だに見受けられます。
村上隆さんの功績は、おそらくこの先20〜50年と時が経つにつれてアートとして語り継がれるところにあります。
日本のサブカルチャーはどうしても消費的です。ただ時が経つままにしてしまうとどうしても忘れ去られる、歴史の狭間に消えてしまうなどしてしまいます。アートとして再定義・再構成することで価値を持たせる、守るという意味もあるのだということを知っておいてください。村上隆の作品とともにオタク文化は、国際的なアーカイブに残ることで繰り返し露出することになります。
それって日本人にとってはいいことですよね?
李 禹煥(リ・ウーファン、Lee U-Fan、이우환、1936年 – )
大韓民国慶尚南道に生まれ、日本を拠点に世界的に活動している美術家。多摩美術大学名誉教授。
李さんの作品は、シンプルなドローイング、石、岩、ガラス、金属といった素材を生かした作品作りが基礎になっています。
「関係項」というタイトルが李さんの立体作品には包括的に使われています。あらゆるものは世界との関係性によって成立し、それのみで存在しているのではないという主張です。これは李さんが主導した「もの派」という1960年代から1970年代中期まで続いた現代美術の大きな動向に共通する考え方です。
はじめて李さんの作品を見たときは、ものの存在感と空間支配力に圧倒されました。美術が体験するものだと感じた初めての経験だったと思います。作ったり描いたりするだけが作品制作ではない。物の成り立ちや存在の意味を考えさせるなど、デュシャンに通じる現代アートの骨太な核を感じることができます。
草間 彌生(くさま やよい、1929年(昭和4年)3月22日 – )
幼い頃から悩まされていた幻覚や幻聴から逃れるために、それらの幻覚・幻聴を絵にし始めた。1957年(昭和32年)に渡米すると絵画や立体作品の制作だけではなくハプニングと称される過激なパフォーマンスを実行し、1960年代には「前衛の女王」の異名をとった。
草間彌生のいくつかの作品は、水玉模様などの同一のモチーフの反復によって絵画の画面や彫刻の表面を覆うことが特徴の一つである。合わせ鏡を用いて光やオブジェを無限に広がるように見せるインスタレーションや、男根状のオブジェを日用品などに張り付ける立体作品も制作している。カボチャをモチーフにした作品もしばしば見られる。
また、ファッションデザインや小説執筆などの活動も行う。 ウィキペディアの執筆者,2020,「草間彌生」『ウィキペディア日本語版』,(2020年9月14日取得,https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E8%8D%89%E9%96%93%E5%BD%8C%E7%94%9F&oldid=79274704
まさにウィキペディアで紹介されていた通りの存在なので引用しました。
自らの病気がコンセプトという圧倒的な主観をここまで発信し、展開してきた才能には脱帽です。もはや「草間彌生という現象を見る」という印象で、正直に言うとあまり生身の草間彌生をリアルに感じたことは無いです。少なくとも個人でできるレベルを超越しています。今で言うと、ここ最近人気の高まっている、バンクシーにも言える気がします。
初期のころの作品にはリアルさを感じます。この作品はまだ見たことなかったので印象に残りました。見返してみたら全然初期の頃の作品ではなかったですね・・・。
宮島 達男(みやじま たつお、1957年1月16日 – )
LEDを使った1から9まで数字の変化するデジタルカウンターを使ったインスタレーションや立体作品をつくっています。コンセプトは「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」というもの。0(ゼロは)表示されず、死を暗示させます。生と死、輪廻転生などをテーマにした作品やプロジェクトを手掛けています。
これまでに紹介した作家の中でも特に一貫した表現手段とコンセプトで独自路線をいく作家です。その堅実で誠実な作家性もあり、東北芸術工科大学副学長、京都造形芸術大学副学長も兼任。2016年両校を退職。現在は両校の客員教授をしています。
奈良 美智(なら よしとも、1959年12月5日 – )
日本の画家・彫刻家。世界的に評価されている美術作家で、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やロサンゼルス現代美術館に作品が所蔵されるなど日本の現代美術の第二世代を代表するひとり。
子供、動物などが単純に抽象化され、デフォルメされて描かれた作品群は、絵画や彫刻としてそれぞれにポップ、シリアス、ロックなどの表現で見ている人たちに親しみを持って語り掛けます。
単純に紙面でみても、かわいい、すき!という意見が多いと思います。ストレートにイラストレーションという視点でも人気のある作家です。村上隆さんと同世代ということもあり、国際的には同じ文脈で評価されてきた背景はありますが、日本国内の人気は絶大です!
私も好きな作家です、特に展示の作りこみと世界観が好きですね。絵本の中にいるような体験をすることができます。大規模個展などは一種のテーマパークのようでわくわくさせられます。これは、1つ1つの作品のクオリティのなせる業でもあります。単なるイラストレーションとは一線画す部分ですね。
杉本 博司(すぎもと ひろし、1948年2月23日 – )
写真や現代美術に限らず、古美術、建築、造園、伝統芸能など幅広い文化に精通する作家です。物事の本質や心理、記憶の古層にある曖昧なイメージ、特定の形をもたない光などのビジョンを明快なコンセプトと職人的技術で作品化してきました。
とくに有名なシリーズの『ジオラマ』は、自然博物館のジオラマを写真に撮って、あたかもそのシーンがリアルであるように映し出した作品です。この作品を初めて見たときは、そういう方法があったか!!と思わされました。ただ杉本博司の作品はそれで終わることなく、持っている様々な知識を使って実験的な作品制作を行って展開しています。個人的に一番印象深いのは、三十三間堂の「千体仏」を撮影したシリーズです。群馬の原美術館にあるそうなので、そのうち行きたいと思っています。
まとめ
長文になってしまいました。
どの作家もSTARというにふさわしい方々なのでどうしても長くなりますね。1人1人が魅力的な人物で、それぞれに個別に美術館があってもおかしく無いくらいの方々なので概要だけでも長くなって当然ですよね。
今回は“さわり”の概要だけです。
そして、このSTARS展はそうなのです。
“さわり”だけです。
これだけのSTARたちですから6人もあつめれば“さわり”を紹介して終わってしまいます。
漫画でいえば、孫悟空、桜木花道、浦飯幽助、キン肉マン、両津勘吉、大空翼といったところでしょうか。
ジャンプ黄金世代でまとめたとしてもこれだけの個性が集まったら、一律均等に内容を薄めるしかないですよね。
そんな展示会です。
とはいえ、豪華な面々が一同に見れるチャンスです!
あまり現代アートになじみのない方はこの展示をきっかけにお気に入りの作家をみつけて、現代アート沼にはまってみてはいかがでしょうか?
アートリテラシーが高まること間違いなしです。
それではまた!